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会社を破産(倒産)させる時、取引先・金融機関への対応は?

最終更新日
2023年 2月20日
著者: 弁護士法人みらい総合法律事務所 
代表社員 弁護士 谷原誠

会社の資金繰りが厳しくなって債務を返済しきれない状況になってしまえば、
破産手続きを検討することになります。

倒産する場合、取引先や金融機関などの債権者には適切に対応を行わなければなりません。

なぜならば、破産手続きにおいて債権者への対応は非常に重要なものになるからです。

適切に債権者へ対応できなければ破産手続きがスムーズに進まないだけではなく、
最悪の場合は破産手続きが認められないケースもあります。

こでは、会社を破産(倒産)させる時の取引先や金融機関への対応について詳しくご紹介します。

会社の破産手続きにおける取引先や金融機関の立場

会社の経営には従業員達の働きだけではなく、
資金を調達するための金融機関や会社の商品やサービスの売買する取引先の存在によって成り立っています。

そのため、会社の破産手続きでは取引先や金融機関も関係してきます。

会社の破産手続きにおける取引先や金融機関の立場について解説していきます。

取引先や金融機関は「債権者」になる

特定の人に対して金銭の支払いや給付の要求などを行ったりできる権利を「債権」と呼び、
その権利を持つ者を「債権者」と呼びます。

お金を借りている金融機関や、売掛金や貸付金のある取引先は、
破産手続きにおいて債権者になります。

本来であればお金を借りている「債務者」である会社側は契約に基づいて返済を行わなければなりませんが、返済できる資金がないため裁判所を通した破産手続きを行うことになります。

債権者保護の理念について

破産手続きは債務者が支払いきれなくなった負債を免責し、
債務者の経済的更生を図ることを目的としています。

ただし、破産手続きで大きな影響を受けるには金融機関や取引先などの債権者であり、
債権者の理解が得られなければ手続きは成立しません。

そのため、債務者の資産を換価処分することで得られた金銭は全ての債権者へ平等に分配されることで債権者の利益を確保することが破産法第1条によって定められています。

租税債権など、優先される債権や劣後する債権などの例外はありますが、
この債権者保護の理念により、
一般債権者の中では優劣をつけることなく全ての債権者の利益が確保されることになります。

会社の破産手続きにおいて債権者への対応が重要になる理由

会社の破産手続きにおいて債権者への対応が重要になる理由
会社の破産手続きでは取引先や金融機関などの債権者が関わってきます。

そして、破産手続きにおいて債権者への対応は非常に重要なものです。

債権者の対応が重要になる理由には、次のようなことが挙げられます。

理由①:債権者は破産手続きに従って弁済を受けることになる

破産手続開始決定が行われれば、
会社の持つ資産は破産管財人が管理することになります。

そのため、会社が自由に債権者に対して債務を弁済することはできません。

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前項で説明したように、資産は換価処分されて債権者保護の理念によって全債権者へ平等に分配されます。

ただし、債権の種類によって弁済の優先順位が破産手続きでは設けられています。

最優先で弁済されるのは「財団債権」で、債権者全体のために支出される費用などが該当します。

財団債権の弁済が完了した後に「破産債権」が弁済されることになり、
多くの債権者は破産債権者に該当します。

金融機関や取引先も破産債権者になります。

破産債権の中でもさらに「優先的破産債権」への弁済が優先され、
一部の国税や地方税、保険料の請求権、雇用関係の請求権なども順位に応じて弁済されます。

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こうした弁済が行われた後に金融機関や取引先の債権への弁済が行われることになるため、金融機関や取引先の債権の弁済は優先順位が高いとは言えません。

そのため、不満を持つ債権者も現れることを想定し、適切に対応すべきだと言えます。

理由②:弁済を受けられなかった債権は消滅する

上述したように、破産手続きは債権の優先順位によって弁済が行われていきます。

そして、債権者の資産が債務額に不足していれば、優先順位の低い債権は弁済を受けられないことになります。

債権者の配当が行われた後に債権が残っていたとしても、
これらの債権は最終的には、会社の法人格が消滅することによって消滅します。

破産債権では弁済を受けられない債権者が現れることが通常のことになるため、
取引先や金融機関は多くの債権を失う恐れがあります。

このように債権が回収できなくなってしまうことを恐れ、
破産手続きの妨害行為などが行われる可能性も全くないとは言い切れません。

そのため、債権者である取引先や金融機関には適切に対応し、理解を得る必要があります。

会社の破産手続きを行う場合、

取引先や金融機関などの債権者は多くの債権を失う恐れがあります。

債権者には迷惑をかけてしまうことになるため、
倒産する会社側は債権者に対して適切に対応すべきです。

理由③:破産以外の債務整理の場合は債権者の同意が必要になる

会社の倒産には、破産以外の債務整理方法もあります。

ただし、破産以外の債務整理を選択する場合は債権者の同意が必要です。

それぞれの債務整理方法で必要になる債権者の同意数は次の通りになります。

特別清算

破産と同じ清算型の倒産手続きになるため、会社は消滅することになります。

破産よりも手続きが簡易的で、株式会社のみが利用できる手続きです。

特別清算の利用には、債権額で一定数以上の債権者の同意が必要になります。

【関連記事】
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民事再生

再建型の倒産手続きで、会社を存続させながら債務を圧縮する手続きになります。

従業員の雇用が維持できる可能性があり、経営陣の退任の必要もありません。

民事再生では
・出席した議決権者の過半数の同意
・欠席債権者も含めた全債権額の2分の1以上の議決権者の同意
が必要となります。

【関連記事】
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会社更生

民事再生と同様の再建型の倒産手続きになるため、
会社を存続させることが前提になります。

民事再生とは異なり株式会社のみが利用でき、
株主と担保権者の権利も債務整理対処になります。

そのため決議では担保権者を含む債権者と株主の中の議決権を持つ者の一定数以上の同意が必要です。

任意整理

債権者と個別で高書湯することで債務の利息カットや返済スケジュールの見直しを行う方法です。

このように、破産以外の方法で債務整理を行うことになれば債権者の同意が重要になるため、手続きに関しては十分に債権者に理解してもらうことが必要になります。

取引先や金融機関などの債権者への対応の流れ

債権者への対応の流れ
破産手続を行う場合、取引先や金融機関などの債権者一人ひとりに対応するというわけではありません。
債権者には一斉に破産手続きを行う旨を伝えることになります。
債権者への対応の流れから見ていきましょう。

受任通知を送付する

会社の破産手続きは手続きが複雑なことや専門知識が必要になるため、
専門家である弁護士に依頼することになります。

弁護士に依頼をすれば、全ての債権者に対して直ちに受任通知が送付されます。

受任通知とは、弁護士が代理人となり会社の破産手続きを行うことを知らせる書面です。

この通知により、取引先や金融機関などの債権者は会社が破産手続きを行うことを知ります。

受任通知を送付すれば、支払いや返済を行うことは中断されます。

債権者とのやり取りは弁護士が行うことになるため、
請求や取立てなども止まります。

裁判所から破産手続開始決定が送付される

弁護士に依頼すれば、必要な書類を収集・作成して裁判所へ破産手続きの申し立てを行います。

裁判所が破産手続きの開始の要件を満たしていると判断すれば、
破産手続開始決定を知らせる書面が債務者と債権者のどちらにも書面で送付されます。

この書面によって債権者は破産手続きが開始されることを知ります。

債権者集会の開催

破産手続開始決定から3カ月前後経過すると、債権者集会が開催されます。

債権者集会とは、債務者財産や債務状況などを調査した結果を報告し、債権者の意見を取り入れるために行われる集会です。

裁判所の管理の下で行われるため、債権者集会には裁判官も参加します。

その他にも破産管財人や会社側の代理人弁護士、債務者、債権者などが参加しますが、債権者は参加しないケースが多いです。

債権者集会では質疑応答も行い、
債権者からの質問から質問を受けるようなこともあります。

債権者集会は破産管財人による資産の換価が終了するまで行われ、
早ければ1回で終わることもありますが、3~4回開かれることが多いです。

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会社を破産させる際の取引先や金融機関への適切な対応

取引先や金融機関への適切な対応
破産手続きを行えば、取引先や金融機関には多大な損害を与える可能性があります。

取引先や金融機関などの債権者に対して適切に対応を行い、
スムーズに破産手続きを進められるように心掛けましょう。

債権者に対し、次のことを念頭に置いて対応するようにしてください。

特定の債権者へ偏頗弁済しない

偏頗(へんぱ)弁済とは、特定の債権を優遇して返済や担保の提供を行う行為です。

「お世話になったから」「相手の会社も苦しくなってしまう」などの考えから特定の債権者に弁済をしたいという気持ちが芽生えることもあるでしょう。

しかし、破産手続きにおいて債権者の利益は平等でなくてはなりません。

破産手続き前であったとしても、破産管理人によって否認されてしまう可能性があります。

財産隠しや処分は行わない

破産手続きでは破産管財人によって会社の財産が全て換価され、債権者へ分配されます。

少しでも財産を守ろうとして隠すことや、勝手に処分してしまうことは決して行ってはいけない行為です。

こうした行為は、破産法第265条の詐欺破産罪に該当します。

詐欺破産罪が認められれば10年以下の懲役もしくは1千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科されることが規定されています。

財産隠しや処分は債権者の権利を害する行為になるため、
財産隠しや処分を行わずに誠実に対応してください。

弁護士に対応してもらう

弁護士に対応してもらう
破産手続きを進めること自体に知識が必要になるため、
専門家である弁護士のサポートが必要になります。

破産手続を進めるためだけではなく、
弁護士に依頼すれば取引先や金融機関などの債権者への対応も行ってもらうことができます。

債権者と債務者が直接やり取りを行えば、
口論などトラブルに発展しまう恐れがあります。

債務者としても破産手続きに対するクレームなどを受けることは精神的に負担が大きいものです。

そのため、弁護士に代理人として対応してもらうことは大切です。

弁護士ならば多くの破産手続きを経験しているため、
債権者に対して適切に対応をすることができ、安心して任せられるでしょう。

取引先と金融機関への対応のポイント

取引先や金融機関など債権者に対する適切な対応を紹介しましたが、取引先と金融機関ではそれぞれ押さえておくべきポイントが異なります。

破産手続において、それぞれの債権者への対応で押さえておくべきポイントについて知っておきましょう。

金融機関への対応

金融機関が債権者の場合、会社が当該金融機関の預金口座を保有していれば、
弁護士からの受任通知を受けた時点で多くの金融機関が当該預金口座の凍結を行います。

なぜならば、金融機関は預金口座に保管されている預金を債権と相殺したいからです。

そうなれば、破産手続きに必要な費用や従業員への給与などの支払いができなくなってしまう恐れがあることを憶えておきましょう。

取引先への対応

取引先との業務関係における取引は、十分に注意する必要があります。

会社が破産することを分かっていながら取引を行えば、債権額を増大させることになります。
しかし、従業員が破産を知らずに取引してしまうようなケースもあるため、従業員には新規取引は行わないように伝えておかなければなりません。

また、破産することを知った取引先が、
売掛や貸付の支払いを拒むようなケースもあります。

こうした場合は弁護士に対応を任せるようにしましょう。

まとめ

会社の破産では、金融機関や取引先などの債権者からクレームが集められることが予想されます。

申し訳なさから誤った対応をしてしまったり、クレームから口論になったりすれば、破産手続きをスムーズに進めることができません。

適切に対応するためにも、こちらの記事で紹介した対応のポイントを念頭に置いて破産手続きを進めてください。

弁護士に依頼すれば金融機関や取引先の対応も任せることができ、
経営陣の心労の負担も減らすことができるでしょう。

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