会社破産の申立てをすると、面接や破産管財人の選任を経て、約3か月に1回のペースで債権者集会が開かれます。
債権者集会を2~3回程度経ると破産手続は終了するのが一般的で、全体で6か月~1年程度の期間を要します。
社長が法人破産を決断できない理由には、再スタートまで時間がかかる・時間がかかれば当然ストレスも大きい……といった懸念も含まれるのではないでしょうか。
本記事で手続きの流れも含めて下記ポイントを整理しておくと、見通しが立つことで決断しやすくなるはずです。
目次
会社(法人)の破産手続終了までにかかる期間は、申立日から起算して6か月から1年程度が一般的です。
厳密には負債及び財産の状況等に左右され、事案の性質によって以下のような違いがあります。
会社破産では、破産法で定める要件を満たしているのを確認したのち、会社の負債及び財産の調査に加え財産の換価と債権者への配当が行われます。
これらの処理にかかる時間は業種・職種・破産までの経緯によって異なり、少なくとも即時で済むものではありません。
破産手続が集結するのは、一連の手続きで会社の資産がゼロとなった時です。
令和3年度の司法統計によれば、全国で取り扱った破産既済事件の審理期間は次のように出ています。
個人破産の件数も含まれますが、期間の見込みの手がかりになります。
司法統計で審理期間にばらつきがあるのを見たように、会社の破産手続のスケジュール及び期間は一定ではありません。
状況が下記のように単純であれば、より早く終了する可能性大と言えます。
破産手続が進められなくなるタイミングは大まかに2通りあり、配当の有無で「廃止」と「終結」のいずれかで終結します。
結論を言えば、会社にほとんど資産がない場合は「廃止」となり、手続からの早期解放が見込めます。
法人の破産管財事件には、通常管財事件と少額管財事件の2種類があります。
これらは破産法で定められた名称・手続きではなく、東京・名古屋等の地方裁判所の運用上存在するものです。
結論を言えば、少額管財事件ないし単純な事件をスピード処理する運用がある場合、手続終了までの期間は早まりやすくなります。
少額管財事件の運用がある裁判所では、通常の処理を行う事件を区別するため「通常管財」(普通管財・特定管財とも)と呼んでいます。
通常管財事件として扱われるのは、次のような性質のある事案が対象です。
少額管財事件とは、通常管財事件に比べて迅速かつ簡潔な処理で済むものです。
例として、もう会社の財産が払底していて配当しようがない場合が挙げられます。
一人社長、ごく小規模な会社、ぎりぎりまで経営努力を続けていた会社等、下記の条件が認められて少額管財事件に進むでしょう。
この場合は、期間の短縮だけでなく、予納金と呼ばれる納めるべき費用も安くなる場合があります(東京地裁等)。
会社を破産させるにあたり、事前に書類収集や関係者との調整は必要不可欠です。
所要時間は破産手続とは別に見積もる必要があり、破産手続終了までの目安期間(6か月~1年程度)にプラス1か月~3か月程は準備のため確保しておく必要があります。
破産申立てを近々に予定している時の参考となるよう、要点を押さえて準備の内容を整理しておきましょう。
会社破産の手続きは自力で行わず、弁護士に依頼するのが定石です。
税を含む債権者の状況をリストアップした上で、雇用契約や進行中の業務の取扱いを決めつつ、財産の保全を含む破産の諸問題にケースバイケースで対応する必要があるからです。
法人破産にあたっては、法律で定める申立書と財産目録の他に、会社の登記情報や資産及び負債の状況が分かる添付書類が必要です。
弁護士依頼のタイミングで、さっそく次のようなものを用意します(一例)。
会社で用意すべき書類が揃ったら、弁護士から各債権者へ受任通知が送られます。以後は債務者に代理人が付き、橋渡し役を担うと知らせるものです。
受任通知の送付以降、会社に督促連絡が直接来ることはなくなります。
事業活動に必要な各種契約の処理は、破産による混乱に注意しながら慎重に行います。
従業員との雇用契約・店舗等の賃貸借契約に関しては、そのままにしておくと継続的な支出が発生しつつあるため、破産申立て前に解約しておくのが一般的です。
取引先については、取り立て行為や売掛債権の支払い拒否等の混乱に注意しつつ、タイミングを見計らって適宜対応します。
会社の破産手続は、ただ時間がかかるばかりでなく、会社の代表者として裁判所からの呼び出しに応じなければならない場面がいくつかあります。
全体の流れを追い、どのような対処が今後必要なるのか整理しておけば、不安はいくらか軽減されるはずです。
事前準備で揃えた必要書類を、主たる営業所の所在地を管轄する地方裁判所に提出します。
この時点で破産手続開始決定が下ることはなく、下記のような審査・審尋を通し、破産法で定める要件と合致しているかチェックされます。
裁判所が少額管財事件もしくは普通管財事件(特定管財事件)として取り扱う運用を行っている場合、一連の確認で振り分けが実施されます。
提出した書類に不備・不足があれば追加提出が指示され、会社や利害関係人に質問すべき事項がピックアップされます。
会社の代表者等が裁判所に呼び出され、破産申立てに至るまでの状況につき、裁判官や破産管財人候補者から質問されます。
裁判所運用により、申立書類の提出と同時に審尋する「即日面接」と呼ばれる対応が取られることもあります。
申立書類等で破産できる条件(支払不能・債務超過)が整っていると判断された時は、破産手続開始決定が発令されます。
発令があると、財産の処分や配当を業務とする「破産管財人」が選任されると共に、官報公告も行われて倒産が公になります。
破産手続開始決定のすぐ後、会社から破産管財人へと財産を引き継ぐための「引継予納金」を納付しなくてはなりません。
納付すべき額は、資産及び負債の額に応じます。
会社から財産を引き継いだ破産管財人は、債権調査と財産の換価処分及び配当をメインに業務を進めます。滞納している税金(租税債権)の処理や、取引先・従業員との契約に関する処理も、破産管財人の仕事です。
会社の代表者らは、必要に応じて現地調査の立会や聴取に協力しなければなりません。
会社の債権者らに対しては、約3か月に1度のペースで破産管財人から報告があります。
報告の場である債権者集会には、破産申立人が必ず出席しなければなりません。集会は配当が終わるまで行われ、計2~3回となるのが一般的です。
なお、1回目の債権者集会までに配当すべき財産がなくなるか、債権者の全員同意があった場合、その段階で破産手続終了となります(=異時廃止または同時廃止)。
配当が終了すると破産手続終結決定が下ります。破産手続開始決定から起算すると、少額管財事件で3か月~6か月程度、通常管財事件で1年以上に及びます。
改めて会社の破産手続終了までにかかる期間を整理すると、申立ての準備に1か月~3か月、申立てから終了までに6か月から1年程度を要します。
終了のタイミングは会社の状況しだいであり、資産が一定以下等の条件が整えば最速で廃止・終結に至れるでしょう。
会社破産の手続はあくまでも破産法及び裁判所の運用に沿うため、期間を短縮するための特別な方法はありません。
どちらかと言えば、弁護士の手厚いサポートを得て、書類不備・不足や利害関係人とのトラブルを慎重に回避し「無用に長引かせない」ことの方が大切です。
会社を破産させることが必要な場合は、勇気を持って弁護士に相談しましょう。