会社の倒産手続きでは、経営者個人が影響を受けることが本来はありません。
しかし、中小企業や個人経営の会社の場合は、経営者が連帯保証人になっていることで経営者本人も自己破産が必要になるケースがあります。
自己破産をすれば経営者の生活はその後どうなってしまうのでしょうか?
今回は、会社と同時に自己破産した経営者のその後の生活について解説していきます。
会社の資金繰りが厳しくなれば、倒産手続きを検討することになります。
会社が倒産した場合、負債はどうなるのでしょうか?
会社の倒産によって受ける経営者の影響と債務についてみていきましょう。
会社が倒産しても経営者には大きな影響がないことが一般的です。
なぜならば、会社の倒産手続きは法人格として扱われることになり、法律上では経営者個人とは別物と考えられるからです。
しかし、現実問題として、会社の負債の連帯保証人に経営者がなってしまっているケースがあります。
とくに会社の規模が小さければ、金融機関で資金の融資や借入れを受けたりする際に経営者の名義で連帯保証を行うことも多いです。
そうすると、会社が倒産すれば会社の負債は消滅しますが、連帯保証人の債務義務はのこることになります。
会社の負債の連帯保証人として返済を請求され、経営者が個人の資産で返済できれば問題ありません。
しかし、個人の資産で返済できなければ経営者も破産手続などの債務の整理が必要になります。
経営者が連帯保証人になっているケースでは、法人と個人の破産手続を同時に行うことが一般的です。
そうすれば、会社の倒産と同時に経営者も破産することになるため、会社も経営者個人も同時に債務の支払い義務が免責されます。
会社と同時に経営者が自己破産する場合、個人の破産手続きを裁判所へ申立てることになります。
破産手続き中の生活には一定の制限があるため、注意が必要です。
破産後の生活の影響について知る前に、まずは破産手続き中の生活における注意点について知っておきましょう。
会社を倒産した後に、再び新しい会社を作ることや他社へ再就職することは可能です。
しかし、破産手続きによって一定の職業に就く資格が喪失されてしまいます。
制約のかかる職業は、以下です。
こうした職業は、他人の財産を預かる可能性があるため破産手続き中には資格登録できないとされています。
ただし、職業の制限は破産手続開始決定になれば復権されるため、再び資格を取り戻して仕事に就けるケースが多いです。
破産手続きの期間中は、転居や旅行などの移動が制限されるケースがあります。
自己破産には「同時廃止手続」と「管財手続(管財事件)」の2種類がありますが、感材手続になった場合に移動の制限が発生します。
なぜならば、管財事件では債務者に裁判所や破産管財人に対して協力や説明を行うことが義務付けられており、すぐに連絡が取れるようにする必要があります。
債務者が長期間に渡って住居を離れて連絡がとれなくなってしまえば、破産手続きに支障をきたすことになります。
そのため、転居や旅行など長期間に渡る移動がある場合は、裁判所の許可を得なければなりません。
破産手続き中に債務者宛に送られてくる郵便物は、全て破産管財人へ郵送されるように転送手続きが行われます。
これは、破産管財人が財産状況を把握するために必要な手続きです。
郵便物は破産管財人が確認・管理した後に債務者へと引き渡されることになるため、債務者の手元にすぐ届くわけではありません。
そのため、早急に必要な書類等がある場合でも、破産管財人が受け取って内容を確認した後に、直接もしくは郵送で受け取ることになります。
破産手続きが全て終了すれば、郵便物の制限も解除されます。
会社の倒産と同時に経営者も自己破産する場合、その後の生活がどのように変わるのか不安に思う方も多いでしょう。
自己破産をすればメリットもありますが、生活が大きく変化するというデメリットもあります。
自己破産した後の生活における影響についてご紹介します。
自己破産した経営者のその後の生活において、自己破産がメリットだと考えられる点についてみていきましょう。
自己破産を免責決定を得れば、債務は免責されることになります。
会社の破産によって連帯保証人となっていた債務があれば、本来であれば経営者が代わりに返済する義務が生じるため、自宅に督促の連絡や書面が届くようになります。
しかし、倒産と同時に自己破産をすれば借金の督促に悩まされることはありません。
弁護士に自己破産手続きを依頼した時点で弁護士が代理人になることが各債権者へと通知されるため、債権者が債務者へ直接連絡することは禁じられます。
借金の督促は精神的な負担になるため、督促から解放されることで精神面のストレス軽減になるといえます。
会社の倒産手続と同時に経営者が自己破産した場合でも、自己破産後に新しい仕事に就くことは可能です。
新しい仕事を探し、再出発することができます。
一度は失敗したものの、再び新しい会社を立ち上げることも可能です。
ただし、倒産や破産をしたことは金融機関の融資を受ける際には不利になるため、初期投資が必要な会社の立ち上げは難しいと考えられます。
また、倒産した会社の元取引先等にも迷惑をかけており、同じ業界内では倒産の話が回ってしまっている可能性があります。
そのため、起業することに制限はないものの、ハードルが高くなるといえます。
会社と経営者個人のどちらも破産手続きを行った場合でも、経営者の家族が何らかの法的責任を負うようなことは一般的にはないといえます。
家族が自己破産した経営者の代わりに返済を請求されるようなことや、家族名義の資産を処分されるようなことにはなりません。
ただし、家族も会社の債務の連隊保証人になってしまっている場合や、経営者個人の債務の連隊保証人になっている場合、財産隠しに協力したような場合は家族にも影響が出ることになるため注意が必要です。
自己破産した経営者のその後の生活において、自己破産がデメリットになると考えられるものについてみていきましょう。
自己破産をすれば、破産管財人によって経営者の個人の財産は換価処分されることになります。
自宅や車などの財産も換価処分の対象になるため、引っ越しの必要性が出てきます。
思い入れのある自宅であったとしても、自己破産では自宅の処分を免れることは難しいでしょう。
ただし、全ての財産を失うというわけではありません。
自由財産と呼ばれる財産は自己破産後も持っておくことができます。
上記は自己破産で処分されることのない自由財産に該当します。
また、裁判所に自由財産の拡張が認められれば、上記以外にも預貯金や居住用家具の敷金債券などを手元に残せるようになります。
自己破産をすれば、信用情報に事故情報として登録されます。
信用情報は金融機関やクレジットカード会社が新規借入やクレジットカードの審査の際に確認する個人情報です。
自己破産の情報が登録されれば、その情報を見た金融機関やクレジットカード会社は返済能力がないと判断します。
そのため、新規借入やクレジットカードの作成を申し込みしても、審査で落ちてしまいます。
ただし、事故情報が登録される期間は、免責許可決定から5年ほどになります。
それ以降は再び新規借入やクレジットカードの作成も可能です。
自己破産手続きによって自宅や車が換価処分された場合、破産後に再び自宅や車を取得すれば良いと考える方もいるでしょう。
もちろん不動産や車を購入することや、ローンを組むことは禁止されていません。
しかし、信用情報に事故情報として自己破産をしたことが登録されています。
そのため、事故情報が登録されている期間中は、新たにローンを組んで家や車を購入することは難しいといえます。
ローンを組んで車や家を購入したい場合、事故情報の登録が解除される5年後まで待つ必要があります。
自己破産をした後に再び事業などを立ち上げて失敗してしまうようなケースもあるでしょう。
再び債務を抱えることになって自己破産をしようと考えても、免責許可決定から7年間は自己破産が認められません。
なぜならば、自己破産の免責許可決定から7年間は自己破産をしたことが免責不許可事由になるからです。
ただし、裁判官の裁量によって免責が許可されるような場合もあります。
会社の倒産と同時に自己破産を行えば、生活はこれまでと大きく変わってしまいます。
自己破産後の生活の影響を最小限にするためにできる対処法についてご紹介します。
会社の債務の連帯保証の返済が難しい場合に行える債務整理方法は自己破産だけではありません。
個人再生という方法もあります。
個人再生は債務が全額ではなく大幅に免責され、残った債務を再生計画に沿って返済していく方法です。
自己破産とは異なり債務が残りますが、住宅資金特別条項という制度を利用することで住宅ローンの支払いを継続して自宅を維持できます。
ただし、個人再生は利用条件が複雑かつ厳格なので、会社倒産と同時に経営者が利用することは難しい可能性があります。
経営者が個人再生をする場合に問題になりやすい点として、次のような条件が挙げられます。
個人再生は負債額が5000万円未満でなければ利用できず、再生計画が遂行される見込みがなければ認められません。
会社の倒産で5000万円以上の負債を背負えば利用できませんし、倒産をすれば会社からの収入を失います。
そうすると、継続的な収入がないため、再生計画の遂行が難しいと判断されてしまいます。
個人再生を利用するには、すでに他の会社に就職しているなどして継続的な収入を確保する必要があります。
また、個人再生には「小規模個人再生」と「給与所得者等再生」の2種類がありますが、小規模個人再生の場合は債権者の半数以上もしくは債券の合計額が2分の1以上を占める債権者の不同意があれば、個人再生は認められません。
こうした個人再生の要件が満たせるかどうか検討し、個人再生もしくは自己破産を選択すべきでしょう。
会社の倒産手続きも経営者個人の債務整理手続きも行う場合、同時に弁護士へ手続きを依頼することになります。
同時に申立てを行えば裁判所は会社と経営者個人の破産手続きを同一審理で進めることが多く、選任される破産管財人も同じ人になります。
そして、予納金も1回分だけで済むというメリットがあります。
会社の倒産手続きをしてから個人の債務整理についてはゆっくりと考えたいと考える方もいるかもしれませんが、連帯保証人になっている以上は債務の督促が続きます。
そのため、会社の倒産と併せて早急に弁護士へ相談することをおすすめします。
弁護士に相談すれば、状況や負債額に応じた債務整理方法や今後の流れについてアドバイスを得られるでしょう。
会社の倒産と同時に経営者個人も自己破産をするケースは多いです。
経営者個人も自己破産をすれば、連帯保証人になっていた会社の債務から逃れることができ、新しいスタートを切ることができます。
ただし、新規借入やローンを組めないといったデメリットも生じます。
しかし、再就職や新規企業の立ち上げなども可能ですし、時間が経てば再び新規借入やローンを組んで家や車を購入することも可能です。
自己破産だけではなく個人再生で自宅を残すという方法もあるため、まずは弁護士に会社の倒産と併せて個人の債務整理についても相談してみてください。