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会社(法人)の破産手続の費用を徹底解説

最終更新日
2024年 10月17日
著者: 弁護士法人みらい総合法律事務所 
代表社員 弁護士 谷原誠

いざ会社の破産を申し立てようとしても、いくら費用を準備しておけばいいのか、不安になると思います。

☑会社の破産は、いつ弁護士に相談するのがいいのか?
☑会社の破産には、どんなお金がかかるのか?
☑会社を破産させるには、総額でいくらかかるのか?

事業資金がないから破産しようという状態です。費用をいくら準備しておけばいいのか、とても不安だと思います。

そこで、ここでは、会社(法人)の破産手続に関する費用について説明していきたいと思います。

会社の破産手続の概略

【動画解説】会社(法人)の破産手続きの流れを徹底解説

まず、会社の破産費用を説明する前に、会社の破産手続を概観して、どこでどのような費用がかかるかを見ていきましょう。

①破産すべきどうか、弁護士に相談する
会社の破産を考えた場合には、まず弁護士に相談します。
法律相談料がかかることもありますが、今では、初回相談料は無料としているところも多くあります。
法律相談料については、必ず事前に確認するようにしてください。

②破産申立時期の検討
弁護士と相談して、いつころ破産を申し立てるかを検討します。
破産申立には、ある程度まとまった資金が必要となります。
手元資金があればいつでもいいのですが、資金がショートしそうな場合には、売掛先からの入金時期等を考慮して決定することになります。

③会社の整理と資料の準備

④弁護士との契約
この段階で、破産に関する費用を支払うのが一般的です。
原則としては、分割払はない、と想定しておいてください。
そして、ある段階で、会社に資金が残っている場合には、全て申立代理人弁護士に預けてしまうこともあります。
こうなると、この後、会社代表者が会社のお金を動かすことはなくなります。
このあたりは弁護士の判断となります。

⑤弁護士から債権者への受任通知

⑥裁判所に対する破産開始手続開始の申立

⑦裁判所による破産開始手続開始決定・破産管財人の選任

⑧破産管財人との打ち合わせ

⑨破産管財人による会社財産の換価・債権調査手続

⑩債権者集会

⑪配当

⑫破産手続終結

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会社の破産手続費用は、どこでかかるか?

通常、弁護士に依頼する際にかかる費用としては、次のようなものが一般的です。

①着手金
②報酬金
③実費

着手金というのは弁護士が事件に着手する際に、はじめてに支払う手付金のような費用です。これは、事件の結果がどうなろうと返ってこないお金です。

報酬金というのは、事件が終わった際に結果に応じて支払う費用です。

実費というのは、弁護士が事件を書類するのに実際に必要となった交通費などの実費のことです。

しかし、会社の破産手続きの場合には、上記とは異なる弁護士費用の契約の仕方になることが多いです。

弁護士と契約する際に、弁護士費用と実費の全てを弁護士に預けてしまう契約形態です。

支払う費用としては、

①弁護士報酬
②裁判所への予納金
③実費

となります。

なぜ、このような契約形態を取るかというと、破産開始決定までに裁判所に予納金を支払う必要があること、破産開始決定を受けた後は、破産管財人の判断でしか会社から出金ができなくなってしまうこと、早く弁護士に支払いをしないと、預金差押などにより、弁護士に支払いができなくなり、破産申立すらできなくなってしまうこと、など、様々な理由によります。

ですから、会社を破産させようと考えた時には、できるだけ早く弁護士に相談し、どの程度の費用がかかりそうか、見積もってもらうことです。

そして、それだけのお金を残した状態で、弁護士に破産手続きの依頼をすることが大切です。

会社の自己破産手続きに必要な費用

では、具体的に会社の破産手続きには、いくらの費用が必要でしょうか?

これについては、固定化することができません。

いきなり弁護士事務所に電話やメールで相談して、「費用はいくらかかりますか?」と質問しても、その時点では見積もれないことが多い、ということです。

弁護士費用は、申立代理人となる弁護士の作業量や難易度によって変わってきますし、破産手続開始後の破産管財人に予想される作業量などによって裁判所への予納金が変わってくるからです。

最も低額で行う場合でも、次の程度の費用はかかってきます。

会社のみ破産申立をする場合

①弁護士費用 50万円(消費税別途)
②裁判所への予納金 約22~23万円
③実費 2~3万円

合計  80万円前後

会社と同時に代表者の破産申立もする場合

①弁護士費用 70万円(消費税別途)
②裁判所への予納金 約23~24万円
③実費 2~3万円

合計 100万円前後

次のようなケースでは、弁護士費用や裁判所への予納金が増額され、中小企業の場合でも、数百万円かかる場合もあります。

・事業場が何カ所もある場合
・債権額が多額の場合
・債権者数が多い場合
・従業員数が多数の場合
・法律関係が複雑である場合
・訴訟が係属している場合
・債権者からクレームが出ている場合
・何らかの問題点がある場合
・在庫商品や機械類など処分すべき不動産・動産などが多数ある場合
・遠方の裁判所に申立を行う場合

在庫商品や機械類が多数あるものの、破産申立をしてから処分をするのでは、劣化してしまい、処分に支障を来すような場合には、申立前に適正な価格で売却処分をすることもあります。

その場合には、適正額であることを疎明する資料を残しておくことが大切です。

弁護士が、会社から破産に関する相談を受けた場合、会社の財務内容を中心に、その会社の状況を把握して、会社の破産費用を見積もっていきます。

したがって、弁護士に破産に関して相談する際には、会社の状況がよくわかるような使用を持参し、かつ、全てを明確に説明することが大切です。

そうでないと、破産費用を見積もることができず、結局はそれだけ処理が遅れてしまうことになります。

弁護士は、破産手続きについて、見通しが立たない限り、受任することはできないためです。

そこで、初回相談時には、最低でも、

・3期分の確定申告書写し(勘定科目内訳含む)
・会社のパンフレットや組織図があれば持参する
・全部事項証明書

などを持参します。

そうすると、弁護士から、

・事業内容
・資本関係
・役員、従業員等に関すること
・事業場の状況
・確定申告書に基づく財産や負債に関する事項
・租税公課、金融債務、リース等
・不動産や動産等の状況
・資金繰り

等について質問がありますので、それらに答えていきます。

資料とインタビューから、弁護士が会社の状況を把握できた場合には、破産手続きの見通しを立てます。

そして、申立代理人としての作業量や難易度、破産管財人の作業量や難易度等を検討し、破産にかかる費用を見積もることになります。

したがって、会社代表者としては、破産を弁護士に相談する際には、できる限りの資料を提供し、包み隠さず事情説明をすることが大切になってきます。

会社の破産申立費用を準備できない場合

会社の破産手続きには、ある程度の費用がかかります。

資金繰りに窮して会社を破産させるわけですから、破産申立の費用を準備できない場合もあります。その場合には、残念ながら、破産申立をすることはできません。

どうしても、会社の破産には、費用がかかる、ということはご注意いただきたいと思います。

ただ、現時点でお金がなかったとしても、タイミングを検討することによって、破産費用が準備できる場合があります。

通常、会社は、信用取引をしており、商品を販売し、または役務を提供した翌月や数ヶ月後に代金が入金されます。

また、未回収になっている売掛金があるかもしれません。

あるいは、在庫商品を売却すれば、お金ができるかもしれません。

そのような場合には、在庫商品や不動産、動産を売却し、売掛金を回収し、生命保険金を解約するなどして資金を調達してから破産申立をする、という方法もあります。

売掛金の回収については、申立代理人が代理人となって売掛先に内証証明郵便を送付し、交渉し、場合によっては訴訟提起をする場合もあります。

したがって、会社の破産について検討した場合には、まずは、弁護士に相談してみることが大切です。

最後に統計資料です。

年間の破産申立件数を司法統計で調べると、次のようになっています。

【出典】司法統計
http://www.courts.go.jp/app/sihotokei_jp/search

ここ数年、増加しています。

会社の経営が危なくなったら、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。

資金がなくなるから、破産をする、ということになるのですが、ある程度まとまった資金がないと、破産すらできない、ということになります。

その場合には、事実上の倒産ということになります。

このことは、よく憶えておいていただきたいと思います。

【動画解説】会社の破産を弁護士に相談した方がいい5つの理由