会社破産をする場合、会社の代表者の方は今後の私生活への不安を抱えていることでしょう。
「破産をした後は今後の仕事に制限があるのではないか」「自分も債務を背負うことになるのか」などさまざまな不安や疑問があると思います。
そこで今回は、会社(法人)破産をした場合の代表者の生活への影響についてご紹介します。
会社破産してから慌てて対処することにならないように、事前に起こる得る破産後の影響について知っておきましょう。
目次
そもそも会社が破産するとどんなことが起こるのでしょうか?
会社の代表個人への破産の影響を知る前に、まずは会社が破産することで起こる事業への影響についてご紹介します。
会社が破産すれば、その法人格は消滅することになります。
個人の破産手続きでは破産手続きをしても再スタートすることができますが、
会社の破産手続きでは法人を再スタートさせることはできません。
会社が消滅するため、取引先との関係やリースや賃貸借といった契約関係も終了することになります。
そのため、取引先や契約関係への影響もあらかじめ把握しておくことが大切です。
会社を破産するといっても、会社には不動産や車、什器などの財産があります。
こうした会社名義の財産は全て破産手続きにおいて換価・処分されることになります。
個人の破産では一定の財産を持ったまま破産することは認められますが、法人の場合は法人格が消滅するため財産を手元に残す必要性はないと考えられます。
そのため、財産は全て換価されて債権者へ分配されます。
会社が破産するということは会社が消滅するため、従業員の解雇が必要になります。
破産の申し立てを準備する段階で従業員を解雇することが一般的ですが、
従業員の未払いの賃金や退職金などの問題が発生するケースもあります。
倒産する会社の規模が大きいほど多くの社員に影響が出ることになるため、あらかじめ社員の解雇への対応についても検討しておかなければなりません。
会社の資金繰りが厳しくなって破産するという場合、破産手続きは多くの場合、会社の代表者によって行われることになります。
会社の破産手続きにおいて会社の代表者は中心の人物になるため、次のような影響を受けることになります。
会社破産手続では、会社の代表者が手続きにおける活動を中心となって行うことになります。
例えば、裁判所への出頭や破産管財人との打ち合わせなど手続きにはさまざまな手順があります。
こうした手続きにおいて説明が必要なことは多くの場合、代表者が行うため、代表者には破産に関する説明義務が課されることになります。
また、破産手続きが完了するまでは裁判所の許可なく居住地を移転できないという制約も受けます。
こうした制約は破産手続きが完了すれば解除されますが、手続きが終了するまでは転居や旅行などはできないということを知っておきましょう。
会社の破産手続きはあくまでも会社の破産手続きになるため、代表者個人が破産するわけではありません。
しかし、会社の代表者が金融機関の借入金などの会社の負債を連帯保証している場合、連帯保証人として債務を負うことになります。
会社が破産しても連帯保証人の責任は消滅しません。
とくに中小企業では代表者が連帯保証人になっているようなケースも多いです。
こうした場合、会社は破産手続きで消滅させることはできますが、代表者に債務が残ってしまうことになります。
会社の破産で代表者が連帯保証人になっていなければ、会社の破産後の代表者個人の生活への影響は少ないでしょう。
しかし、中小企業では会社の代表者が資金の融資や借入れの際に代表者の個人名義を連帯保証人しているケースは珍しくありません。
そうすると、会社が破産した際に代表者は大きな影響を受けることになります。
会社の破産後に代表者の私生活はどのように変わる可能性があるのかみていきましょう。
代表者個人が会社の負債の連帯保証人になっていた場合、破産手続きで会社を消滅させても連帯保証人としての支払い義務は消滅しません。
そのため、連帯保証人になっている負債の支払いを請求されることになります。
負債を支払うために代表者個人の財産を換価しなければならないようなケースもあるでしょう。
また、中小企業の場合は代表者が連帯保証人になっているケースが多いため、会社の破産と同時に代表者も個人破産手続きを行うことが多いです。
代表者が個人破産した場合にどのようなことが起こるのかについては、次項で詳しくご紹介します。
会社を破産させれば、会社を破産させた代表者として社会的な信用を失う可能性があります。
取引先などにも迷惑をかけることになり、仕事関係で築いてきた信頼は失われることになるでしょう。
会社の連帯保証人になっていれば代表者も債務整理することになり、ブラックリストに載ることになります。
そうすると、新たな借り入れができなくなるため経済的信用も失われることになってしまいます。
会社が破産すれば法人格が消滅するため、代表者も仕事を失います。
そのため、生活のために新たな仕事を探さなければならないというケースもあるでしょう。
会社破産をしても代表者個人が破産するわけではないため、資格や就職に制限が生じるわけではありません。
そのため、新しい生活に向けて早めから仕事探しを行うことはできます。
また、新たに起業することも制限されていないため、新たに起業することも可能です。
ただし、会社破産によって社会的信用を失っているため、取引先を得ることが簡単ではないことが予想されます。
代表者が会社破産によって個人破産をすれば経済的な信用も失われるため、新たな融資を受けることも難しくなります。
会社の負債の連帯保証人になっている場合、連帯保証人である代表者に負債の請求が行われるようになります。
代表者も支払いが難しいという場合には代表者個人も債務整理を検討することになりますが、債務整理には4つの方法があります。
それぞれの債務整理方法の特徴についてご紹介します。
裁判所外で行われる私的整理とも呼ばれる債務整理方法です。
債権者と直接交渉を行い、返済スケジュールの見直しや将来利息のカットなどを行うことで返済負担を軽減させることを目的とします。
個人資産を換価・処分することを避けられ、債権者を選べるというメリットがあります。
しかし、任意整理は大幅に債務を減額できるわけではないため、債務が少ない場合にしか効力は生かせないと言えます。
但し、債権が債権回収会社等の譲渡された場合には、比較的少額で債務を整理できる場合もあります。
裁判所手続きによる債務整理の1つで、大幅に債務を減額することができます。
自己破産とは異なり、財産を換価・処分されることもありません。
ただし、個人再生が認められるには継続的な収入が必要であり、再生計画に沿って返済できることが要件になります。
そのため、会社の破産によって継続的な収入を失う場合には利用できない可能性があります。
裁判所手続きによって債務を全額免責してもらう債務整理です。
個人名義の財産は換価・処分されることになります。
会社破産で代表者も債務整理を行う場合、自己破産になることが多いでしょう。
ただし、自己破産をしても連帯保証人の支払い義務は消滅しないため、代表者個人の債務に連帯保証人がいる場合は注意が必要です。
会社の破産とあわせて代表者個人も破産をする場合、代表者の私生活はどのような変化が起こるのでしょうか?
個人の破産手続を行えば、次のようなことが起こります。
自己破産をした場合、代表者個人の資産は換価されて債権者へ分配されます。
財産とは建物や土地、車など換価して1点あたりが20万円を超えるような財産などが挙げられます。
ただし、自由財産を呼ばれる財産は自己破産しても回収されず、手元に残すことができます。
自由財産は、家財道具や99万円までの現金といった破産後の生活に必要な最低限ものが該当します。
また、自己破産で回収される財産は代表者個人の名義の物で、家族の財産は回収されません。
破産手続き中でも就職や新しい事業の立ち上げなどに制約はありません。
ただし、破産手続きによって一部の資格を失うことがあります。
資格が失われる職業には、次のようなものが挙げられます。
こうした資格は一時的に失われますが、債務の免責決定によって資格が復活することが多いです。
金融機関が新規借入やクレジットカードの新規発行を行う際には、信用情報機関の管理する信用情報というものを参考にします。
この信用情報には個人の金融サービスの契約情報が記録されており、この情報を基にして金融機関がサービスの契約を判断しています。
自己破産をすれば、信用情報に自己破産をしたことが記録されます。
このことを「ブラックリストに載る」とも呼び、
ブラックリストに乗れば5~10年は事故情報が残ることになります。
これにより、新規借入や新規クレジットカードの発行が困難になってしまいます。
会社が破産した場合、その会社の連帯保証人になっている代表者は連帯債務によって支払い義務が生じます。
しかし、「経営者保証に関するガイドライン(経営者保証ガイドライン)」を利用することで代表者の破産が回避できるようなケースもあります。
経営者保証ガイドラインとはどのようなものなのかご紹介します。
経営者保証ガイドラインは、平成26年2月1日より運用が開始された経営者の個人保証の弊害を解消するためのガイドラインです。
会社経営では事業資金が必要になりますが、とくに中小企業では自己調達できない事業資金を銀行などの金融機関から融資を受けて確保することが多くなります。
この際に、金融機関は会社の代表者が連帯保証人になるように求めることが多く、
場合によっては経営者個人の資産を担保にされてしまうケースもあります。
しかし、経営者保証ガイドラインを利用すれば代表者は破産手続きを利用するより多くの財産を手元に残すことができ、
信用情報機関に事故情報として登録されることもありません。
ただし、経営者保証ガイドラインは法律のような強制力はないため、金融機関など債権者からの同意が必要です。
経営者保証ガイドラインは誰もが利用できるというわけではなく、
一定の要件を満たす必要があります。
経営者保証ガイドラインを利用するための要件には、次のようなものが挙げられます。
その他にも複数の条件があるため、利用可能かどうかは弁護士に相談してみましょう。
会社の資金調達のために会社の代表者個人が連帯保証人になっているケースもありますが、その場合は会社の破産と同時に代表者個人の破産も必要になる可能性があります。
代表者個人が破産をすれば、個人の財産が換価・処分されることや信用情報に事故情報が登録されるなどのデメリットがあります。
しかし、破産後の就職や新規事業の立ち上げに制限はないため、新しく再スタートを切ることも可能です。
いずれにしても会社の破産手続きでは弁護士への相談が必要になるため、
連帯保証人に関する相談も併せて行うようにしましょう。